本文へ移動

採用コラム

採用力を高める「整合」の考え方 求人・面接・職場のズレをなくす

求人票には「未経験者を丁寧に育てます」と書いてある。ところが、面接では「経験はありますか」と聞かれる。入社してみると、教える担当者も時間も決まっていない。

例えば、こんな会社に出会ったら、求職者はどう感じるでしょうか。「どの説明を信じればよいのか」「入社して大丈夫だろうか」と不安になるはずです。

採用力を高めるには、仕事、待遇、伝える内容、人の対応に筋を通すことが大切です。本記事では、この筋が通った状態を「整合」と呼びます。

社風と従業員の言動、求人票と採用サイト、採用サイトと面接官、業務内容と給与。こうした組み合わせの食い違いを見つけ、解消することが、採用力につながります。

建設業・製造業の中小企業を念頭に、不整合の具体例と直し方、整合を保ちやすい支援先の選び方を紹介します。

求職者は、説明と体験を重ねながら会社を判断する

求人票に興味を持った人は、採用サイトを読み、会社について調べ、面接で話を聞きます。その過程で、最初に感じた魅力が確かなものかを見極めていきます。

「現場の提案を大切にする会社」にひかれて応募したのに、面接官が話を遮る。休日を取りやすいと聞いていたのに、配属先の上司から違う説明を受ける。こうした経験が重なると興味は幻滅に変わっていきます。

求人票を書いた人、サイトをつくった人、面接をする人が違っても、求職者にとっては一つの会社です。社内の分担にかかわらず、説明や対応は会社全体の姿勢として受け取られます。

求人票でひいた興味を、採用サイトで確信に変える。そして、面接や入社後の職場で、その確信に応える。 このつながりを整えることが重要です。

採用力を弱める、21の不整合

自社の採用活動を、次の組み合わせで点検してみてください。以下は、食い違いを確かめるための仮の例です。

仕事・待遇・社風の不整合

整合を確かめる組み合わせ不整合の例
社風と従業員の言動「意見を言いやすい会社」と掲げるが、上司が現場の提案を取り合わない
業務内容と給与機械の操作に加え、段取り・品質判断・後輩指導まで任せるが、その責任が給与に反映されていない
募集要件と待遇複数資格と豊富な経験を必須にしているが、それに応じた待遇を用意できていない
未経験者歓迎と教育体制経験不問で募集しているが、教える人・時間・手順が決まっていない
裁量の訴求と実際の権限「自分で判断できる」と説明するが、小さな変更にも社長の承認が必要
成長の訴求と育成・評価技術を伸ばせると伝えるが、習熟に応じた仕事や評価の道筋がない
働き方の制度と現場の運用休みを相談できる制度はあるが、交代要員がおらず利用の相談が進まない

社風は、従業員の日々の言動に表れます。「助け合う会社」と伝えるなら、新人が困ったときに声をかけられる相手がいるか。「提案を歓迎する会社」なら、現場の意見を聞く機会があるか。掲げた言葉を、具体的な行動から確かめます。

業務内容と給与も一組で考えたいところです。施工管理の経験者に工程・安全・品質の管理を任せるのか、一部の補助業務から担当してもらうのかで、求める技能や責任は変わります。任せる範囲を広げるなら、それに応じた待遇を検討する必要があります。

求人・採用サイト・選考の不整合

整合を確かめる組み合わせ不整合の例
採用ターゲットと訴求生活時間を安定させたい経験者に対し、成長機会だけを伝えて勤務時間を説明しない
求人票と採用サイト求人票では経験者の専門性を訴求するが、サイトには新卒・未経験者向けの説明しかない
各媒体の募集条件給与や休日を変更したが、一部の求人媒体には古い条件が残っている
採用サイトと面接官「対話を大切にする」と書いてあるが、面接官が質問を遮って一方的に話す
採用担当者と配属先の上司採用担当者は育成を前提に説明するが、配属先の上司は即戦力を求めている
面接での説明と配属後の業務面接では工程改善を任せると話したが、入社後は補助作業が中心になっている
応募の呼びかけと応募後の対応「まずは気軽にご応募ください」と呼びかける一方、問い合わせへの返信が遅い

面接官は、採用サイトに書かれた会社の姿を、言葉と態度で示す立場にあります。面接を担当する前に、求人票や採用サイトを読み、どのような期待を持って応募してくる人なのかを理解しておく必要があります。

仕事の説明にも具体性が必要です。例えば、工程改善を将来任せる予定なら、入社直後の担当業務と、その後の役割を分けて伝えます。時期や条件を省いた説明は、期待の食い違いを生みます。

採用計画・運用・外部支援の不整合

整合を確かめる組み合わせ不整合の例
事業計画と採用時期・人数新しい現場の稼働直前に採用を始め、選考や育成に必要な期間を確保できない
採用人数と受け入れ体制一度に複数人を採用したいが、教えられる従業員は一人しかいない
採用方針と選考基準育成を前提に募集を始めたのに、選考では一人で全業務を担える人だけを通す
発信計画と更新できる時間毎日の発信を計画するが、兼任担当者には素材を集める時間がない
外部支援の範囲と実際の課題面接や受け入れに課題があるのに、求人広告の追加だけを繰り返す
制作物と納品後の運用体制採用サイトは完成したが、募集条件を更新する担当者や手順が決まっていない
支援体制と採用規模・予算少人数の採用支援に多くの担当者が関わり、説明や調整の負担が改善に使える時間・予算を圧迫する

採用に関わる計画や支援体制も、点検の対象です。募集を増やした分だけ、面接や教育に使える時間があるか。発信を続ける担当者がいるか。現場と採用担当者の両方に確かめてみましょう。

不整合は、直す場所を見極める

見つかった食い違いは、内容によって対応が変わります。

情報を直す

給与や休日の古い表記、媒体ごとに異なる仕事内容などは、正しい情報を確認して修正します。

その際、求人票、採用サイト、求人媒体などの掲載先を一覧にしておくと、修正漏れを防ぎやすくなります。今後の変更を誰が確認し、誰が反映するかも決めておきましょう。

運用を直す

面接官によって説明が異なるなら、採用方針や任せる仕事を共有します。応募への返信が遅いなら、担当者と対応期限を決めます。

未経験者を採用する場合は、現場で教えられる工程と時間を確認し、入社直後の仕事と指導担当を決めます。その内容を求人票や採用サイトに反映し、面接でも説明します。受け入れの準備と発信をつなぐことで、「丁寧に育てる」という言葉に根拠が生まれます。

仕事や条件を見直す

求める技能・責任と給与が釣り合わない場合は、報酬、任せる業務、募集要件を合わせて検討します。給与をすぐに上げることが難しければ、入社時点で求める技能を絞り、育成を前提に仕事を分ける方法も考えられます。

この場合は、教える従業員の負担や育成期間も見込む必要があります。募集要件を下げた分を、現場に押しつけてしまえば、別の不整合が生まれます。

私は富士通CEO室で、経営方針の策定・実行支援や進捗管理に携わってきました。採用でも、決めた方針を、担当者、期限、日々の仕事まで落とし込んで考えることを重視しています。

着手する順番に迷ったら、面接で繰り返し聞かれる質問、辞退時に伝えられた理由、入社した人が戸惑った点を集めてみてください。どこに食い違いがあるのかを考える手掛かりになります。

分業した仕事の整合を担う、ディレクターという役割

ここまで見てきた整合は、外部の支援先に依頼する際にも重要です。

Web制作では、企画、取材・執筆、撮影、デザイン、実装などを分担する体制があります。それぞれの専門性を持ち寄り、制作を進めます。

この仕事をまとめる役割の一つが、ディレクターです。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、Webディレクターの仕事として、依頼主の目的・予算・納期の確認、制作スタッフへの指示、進行・品質管理などが紹介されています。

ディレクターは、分担した仕事の方向性をそろえ、品質と納期を管理します。見積もりに「ディレクション費」を設け、要件整理や関係者の調整、品質確認などの費用として示す制作会社もあります。例えば、株式会社デパートによるディレクション費の解説では、こうした業務が説明されています。

採用支援を選ぶ際には、この体制が扱う範囲にも目を向けたいところです。

求人票、採用サイト、面接の支援をそれぞれ別の会社に依頼した場合、各社の担当者が見ている範囲は異なります。サイト制作のディレクターが、給与や職務、面接、入社後の教育まで調整する契約になっているとは限りません。

各社が担当する仕事の品質を高めても、担当範囲の間にある食い違いは残ることがあります。全体を見て、誰が何を直すかを決める役割まで確認する必要があります。

整合を取るための体制にも、整合が必要

分業を進めると、関係者への説明、情報共有、成果物の確認が必要になります。採用方針を変更すれば、原稿、デザイン、掲載内容へ順に反映する作業も生じます。

例えば、募集対象を経験者から未経験者に変える場合を考えてみましょう。募集要件を変え、教育について説明する原稿を用意し、サイトの構成を見直します。担当が分かれていれば、それぞれに変更の背景を伝え、修正内容を確認する必要があります。

こうした調整も実際の仕事です。制作担当者の実務に加え、管理・調整を担う人の時間と人件費がかかります。依頼する企業側にも、打ち合わせや確認の時間が必要です。

調整を専門家が担うことで、社内の負担が軽くなる場合もあります。確かめたいのは、外部に支払う費用と、社内に残る作業の両方です。

少人数を採用したい中小企業で、多くの関係者への説明や調整が膨らみ、改善に使える予算や時間を圧迫しているなら、支援体制を見直す余地があります。

整合を取るための体制にも、整合が必要です。 採用したい人数、改善する範囲、使える予算、社内で動ける人に見合った体制を選びましょう。

見積もりを比べるときは、金額とともに、企画・調整・制作のどこまで含まれるのか、社内で何を用意し、誰が確認するのかを確かめると、実際の負担を判断しやすくなります。

一貫対応の支援先を選ぶと、何が変わるか

採用計画の相談から求人票・採用サイトの制作、運用までを一貫して扱う支援先には、判断の背景を実務へつなぎやすい利点があります。

なぜこの職種を募集するのか。どのような人に来てほしいのか。現場で教えられることは何か。相談時に確かめた事情を、そのまま制作や改善に反映しやすくなります。

具体的には、次のような利点が期待できます。

一貫して扱う内容期待できる利点
採用計画・ターゲットと求人票・サイト採用方針を各媒体の内容へ反映しやすい
相談と実務担当交代に伴う引き継ぎや、同じ説明の繰り返しを減らしやすい
各媒体と修正作業条件や方針の変更を、関連する媒体へ反映しやすい
制作と運用・担当者育成公開後の更新方法まで整え、社内で整合を保ちやすい

「一貫対応」と書かれている場合も、実際の担当範囲を確認しましょう。窓口を一つにまとめる体制もあれば、相談を受けた人が制作や運用まで担当する体制もあります。社内に残る作業や、引き継ぎの回数は変わります。

支援先には、次の点を聞いてみてください。

  • 最初の相談内容を理解した人が、どこまで制作・運用を担当しますか。
  • 仕事や待遇、面接との食い違いが見つかったとき、誰と、どこまで改善を検討できますか。
  • 支援先の担当者間と、自社の社内との調整は、それぞれ誰が担いますか。
  • 条件を変更したとき、各媒体の情報を誰が更新しますか。
  • 支援終了後も、自社の担当者が内容を更新できるようになりますか。

私は製造業の採用サイトを構築した際、管理権限と運営ノウハウを企業側へ引き継いだ経験があります。募集条件や現場の状況は変わるため、公開後に情報を更新できる体制も大切です。

整合は、一度そろえれば終わりというものではありません。仕事内容や採用方針が変わるたびに、関連する説明や運用を見直します。その判断と作業を続けられるところまで考えて、支援先を選びたいものです。

並べて食い違いを見つける

採用の改善に取り組む際は、仕事、待遇、求人票、採用サイト、面接、入社後の受け入れまでを並べてみてください。

社風と日々の言動が合っているか。仕事内容と給与が釣り合っているか。求人票とサイトの説明を、面接官や配属先の上司が共有しているか。食い違いが見つかれば、次に何を直すべきかを考えやすくなります。

支援先についても、どの範囲を、誰が、どこまで担当するかを確認しましょう。採用活動の整合と、それを支える体制の整合を合わせて考えることが、限られた時間と予算を活かすうえで重要です。

砂川大輔事務所では、代表が採用計画の相談から、求人票・採用サイトの制作、情報発信、担当者育成まで一貫して対応しています。相談で確認した現場の事情や採用方針を、そのまま制作・運用に反映する体制です。

採用支援の内容を見る


著者:砂川大輔
砂川大輔事務所 代表。内閣府プロフェッショナル人材活用ガイドブック3度掲載。富士通・アマゾンジャパンの正社員として経営戦略やマーケティングに従事。経験を活かし200社超の中小企業の事業に伴走。建設業・製造業の引き合いが多く、採用計画から制作・情報発信・担当者育成まで支援する。1級土木施工管理技士補、甲種危険物取扱者、甲種火薬類取扱保安責任者、第一種衛生管理者、PRプランナー、内部監査士など、建設・製造業の採用に関する資格を保有。

著者の経歴・専門性を見る

採用コラム一覧へ戻る

貴社の採用について、ご相談ください。