建設業の採用支援先を選ぶ際は、「採りたい人が今どこで働き、何に悩み、自社へ移ると何が変わるのか」を具体的に考えられるかを確かめましょう。
そのために必要なのが、採用する企業と、求職者が現在働く業界・会社の両方への理解です。職人や施工管理者の仕事内容を把握し、その人が転職先を選ぶ理由まで掘り下げる。この力が、求人票や採用サイトで伝える内容を左右します。
建設業では担い手の確保が課題となっており、国土交通省・厚生労働省も、待遇や働き方の改善と生産性向上を合わせて進める必要性を示しています。[参考資料]
採用活動も、求職者が複数の会社を比較していることを前提に考えたいところです。自社を選ぶ理由が伝わらなければ、給与や休日など、比較しやすい条件で判断されます。給与を上げ続ける余力が限られる中小企業にとって、誰にどんな価値を提供できるかを明らかにすることは、採用の大切な準備になります。
この記事では、職人・施工管理者を採用したい建設会社に向けて、採用ターゲットへの理解を軸に、支援先の見極め方を説明します。
1.採用ターゲットを、現在の仕事と悩みまで明文化する
「施工管理の経験者がほしい」「資格を持つ職人を採りたい」。こうした希望を出発点に、どのような人へ働きかけるかを具体化します。
最初に確認するのは、自社で任せる仕事です。工種、担当範囲、入社時に必要な技能・資格、入社後に教えられることを整理します。そのうえで、必要な役割を担える人が、現在どこで何をしているかを考えます。
ターゲット像には、次の情報を書き込んでください。離職中の人を想定する場合は、前職の状況も手がかりになります。
- 現在の業界・会社の特徴と、担当している仕事
- 身につけている経験・技能・資格
- 仕事や職場で困っていることと、その原因
- 転職によって実現したい働き方や将来の役割
- 維持したい給与・待遇と、転職への不安
例えば、次のような人物像です。
ターゲット像の仮説例
現場管理と書類作成を担当する施工管理経験者。日中は現場の調整に追われ、帰社後に一人で書類をまとめるため、帰宅が遅くなっている。施工管理の仕事は続けたいが、事務作業を分担できる会社への転職を考えている。給与水準と、支援体制が実際に機能しているかを気にしている。
ここまで書くと、自社が確認すべきことも見えてきます。事務担当は何を引き受けられるのか。現場担当者の残業はどの程度か。想定する経験に見合う条件を提示できるか、といった点です。
この人物像は説明用の仮説です。社員への聞き取りや応募者とのやり取りを通じて確かめます。職人と施工管理者、経験者と未経験者では必要な説明が変わるため、それぞれのターゲット像を分けておきましょう。
2.採用する会社と、求職者が今いる会社の両方を理解できるか
採用支援先に求める業界理解には、二つの方向があります。
| 理解する対象 | 把握してほしい情報 | 明らかにすること |
|---|---|---|
| 採用する企業の業界・会社 | 工種、受注形態、現場エリア、業務分担、必要技能、育成体制、待遇 | どんな人が必要で、どんな働き方や成長機会を提供できるか |
| 求職者が現在いる業界・会社 | 担当業務、勤務形態、負担が生じる事情、評価・育成、転職の不安 | 何に悩み、次の会社に何を求め、何を基準に比較するか |
例えば施工管理者なら、工種や案件規模、元請・下請の立場、現場の掛け持ち、書類作成の分担などを確かめます。同じ職種名でも、任される範囲や周囲の支援によって日々の働き方は変わります。
職人についても、担当する工程、班の組み方、教わる機会、技能を広げる道筋まで把握したいところです。業務の知識があれば、求職者の悩みが、仕事のどの場面から生じているかを考えやすくなります。
異業種から未経験者を採る場合は、転職元の業界への理解も必要です。
例えば、夜勤のある工場で働き、日中中心の仕事を希望する人を想定してみます。自社の現場に夜間工事はあるのか。早朝の集合や長距離移動はどれくらいあるのか。夜勤手当がなくなることで収入はどう変わるのか。勤務時間と給与を一緒に説明する必要があります。
求職者が今いる会社の事情を知るほど、入社後の変化を具体的に伝えられます。支援先には、こうした違いを踏まえた質問ができるか、未確認の情報をどう調べるかを聞いてみてください。
当事務所のこだわり|採りたい人が、今いる職場にも目を向ける
建設会社や製造会社を含む、さまざまな業種の経営やマーケティングを支援してきました。採用では、転職前後で仕事や働き方がどう変わるかを考えることが大切です。採りたい人が現在いる業界・職場も書き出すと、経験を活かせる点と、入社前に説明すべき変化を整理しやすくなります。
3.求職者の悩みを、場面・原因・影響まで掘り下げられるか
「残業を減らしたい」「技術を身につけたい」「地元で働きたい」。こうした希望の背景には、人によって異なる事情があります。
採用に活かすには、本人が困っている場面を詳しく捉える必要があります。先ほどの施工管理者の仮説なら、次の順序で確かめます。
- 場面: 現場から戻った後、どの書類を、どれくらい作成しているか。
- 原因: 何が本人にしかできず、どの作業なら分担できるか。分担が進まない事情は何か。
- 影響: 帰宅時間や休息、家族との生活にどう影響しているか。
- 希望: 次の職場で何を変えたいか。続けたい仕事や維持したい条件は何か。
原因まで分かれば、求人に載せる情報の優先順位が変わります。書類業務の負担が転職のきっかけなら、担当範囲や事務支援の説明が重要です。長期出張が理由なら、現場エリアと宿泊を伴う出張の実態を詳しく伝えます。
情報を集める際は、自社へ入社した社員の話が手がかりになります。「入社を決めた理由」に加え、「前の職場で困っていたこと」「他社と比較した点」「入社前に不安だったこと」を聞いてみましょう。応募者の質問や、確認できた辞退理由も材料になります。
公開されている求人や企業情報も調べ、聞き取った話と照らし合わせます。ただし、一人の経験を業界全体へ広げたり、特定企業の内情を推測したりすることは避けます。確認できた事実と、これから確かめる仮説を分けておくことが大切です。
当事務所のこだわり|本人の言葉から、選ぶ理由を掘り下げる
EC企業では、顧客レビューを分析し、商品の訴求内容を見直してきました。採用でも、本人が何を気にし、何に価値を感じるかを確かめる視点が役立ちます。社員には「入社を決めた理由」に加え、「入社後に何が変わったか」まで聞いてみてください。働く人の実感から、自社を選ぶ理由を説明する材料が見つかります。
4.自社が解決できる悩みを、根拠とともに伝えられるか
ターゲットの悩みが分かったら、自社が提供できる環境と結びつけます。「誰の、どの悩みを、自社ならどう解決できるか」を整理する段階です。
次の表は、対応関係を考えるための仮説例です。実際の募集では、自社の状況を確かめて内容を決めてください。
| 求職者の状況・悩み | 自社で確かめること | 求人・採用ページで示す根拠 |
|---|---|---|
| 現場対応の後に書類を一人で作成し、帰宅が遅くなる | 事務担当との分担が、実際に負担を減らしているか | 担当範囲、書類作成の流れ、実際の勤務時間 |
| 長期出張が多く、生活の予定を立てにくい | 現場エリアや出張頻度が希望に合うか | 最近の施工エリア、宿泊出張の実績、例外となる案件 |
| 担当作業が固定され、技能を広げる機会が少ない | 新しい工程を学ぶ機会と指導体制があるか | 担当できる工事、指導役、習得の順序、任せる役割 |
「働きやすい会社です」という説明に、誰が何を分担するかを添える。「成長できます」という説明に、どの工事を経験し、誰から何を学べるかを添える。こうした具体性が、転職後を想像する助けになります。
社内では当たり前の仕組みが、別の職場で悩む人にとって価値を持つこともあります。差別化を考える際は、自社の特徴を、採りたい人の現在の環境と比べてみてください。
もちろん、給与や休日も重要です。職場の雰囲気ややりがいと合わせて、生活を維持できる条件を確認する必要があります。転職によって減る手当や、新たに覚える仕事も説明しましょう。
自社にその悩みを解決する体制がなければ、改善できることと必要な時間を検討します。現在の強みを評価する別の候補層を考えることもできます。実施予定の取り組みは予定として示し、今すでに提供できる環境と区別してください。
差別化を含む求人全体の点検項目は、「求人を出しても応募が来ない|建設業・製造業の中小企業が見直したい6つのポイント」でも紹介しています。
5.支援先との面談では、質問と成果物を確かめる
採用支援先との相談では、次の質問を使ってみてください。
| 支援先へ聞く質問 | 確認したい説明・成果物 |
|---|---|
| 当社が採用を狙う人は、今どのような業界・会社で、何をしている人ですか。その人を想定する理由は何ですか。 | 必要な技能と、自社の受け入れ体制に合うターゲット像 |
| その人は、何に悩んで転職を考えますか。今の職場で解決しにくい事情は何ですか。 | 具体的な場面・原因・影響を整理した悩みの仮説 |
| その悩みを当社でどう解決でき、何を根拠に伝えられますか。 | 悩みと自社の仕組み・実績を対応させた整理表 |
| 当社へ移る際、求職者はどんな変化を心配しますか。 | 給与・手当・担当業務などの不安に答える情報 |
| 誰に取材し、何を調べ、求人原稿や募集経路へどう反映しますか。 | 調査・取材の計画、原稿案、媒体を選ぶ理由 |
初回相談では、自社の情報が十分に共有されていない場合もあります。その段階では、追加で何を確認し、どのように答えを作るかを見ます。質問が自社の工種や採用対象に即しているかも、理解を確かめる材料です。
支援実績を聞くときは、業種・職種に加え、実際に担当した仕事と制作物を確認しましょう。類似案件の経験を、自社の規模・地域・体制へどう活かすかまで説明してもらうと、提案を判断しやすくなります。
見積もりでは、ターゲット整理、社員取材、調査、求人原稿・採用ページの制作、公開後の改善がどこまで含まれるかをそろえて比較します。社内で情報を提供する人、原稿を確認する人、広告費などの別途費用も明確にしておきます。
募集経路は、ターゲットがどこで仕事を探し、何を確認するかを踏まえて選びます。公開後も、想定した経験や希望を持つ人に届いたか、面談でどのような質問があったかを確認し、ターゲット像と原稿を見直します。
社内と外部の役割分担は、「採用担当者がいない中小企業へ|建設業・製造業の採用の進め方と外注できること」をご覧ください。
当事務所のこだわり|整理したターゲット像を、原稿と発信までつなぐ
当事務所では、相談から企画・制作・情報発信まで私が対応します。「誰に何を伝えるか」を整理し、求人票や採用ページへ反映します。依頼時には、現場の実態を確認する人と、最初に整える制作物を決めておくと、求職者の悩みに答える情報を集めやすくなります。
6.砂川大輔事務所の採用支援
砂川大輔事務所は、建設業・製造業の中小企業に向けて、採用計画から求人票・採用サイトの制作、情報発信、担当者の育成まで支援しています。
建設会社の人材採用・育成や人材計画に関する支援経験を踏まえ、任せたい仕事と現場の体制を確認します。採用ターゲットを具体化し、経営者や社員への取材を通じて、自社を選ぶ理由を原稿にまとめていきます。
例えば、「職人を募集しているが、どのような人へ何を伝えるかが曖昧」「施工管理者の負担を減らす工夫があるのに、求人票に反映できていない」といった課題が相談の出発点になります。担当者が今後も更新・改善を続けられるよう、実務を通じて手順や判断基準を共有します。
現在の求人票と、採りたい人に任せる仕事を整理しておくと、検討を進めやすくなります。直近に入社した社員の入社理由も、分かる範囲で集めてみてください。
支援の内容や費用は、支援内容・料金プラン・サービス説明資料でご確認いただけます。
現在は満枠で対応しています。支援の受付再開をご希望の方は、「再開したら通知を受け取る」からご登録ください。
よくあるご質問
建設業専門の支援先なら、採用ターゲットも理解してくれますか?
自社の工種や仕事への知識に加え、採用したい人の現職と転職理由を、どこまで把握するかを確認しましょう。異業種から採用する場合は、その人が現在いる業界・職場を調べる方法も聞いてみてください。
採用ターゲットは、一つの人物像に絞る必要がありますか?
必要な役割と受け入れ体制に合えば、複数の候補層を考えられます。経験者・未経験者などで人物像を分け、それぞれの悩み、自社で提供できること、育成に必要な時間を整理して優先順位を決めます。
自社がターゲットの悩みを解決できない場合は、どうしますか?
業務分担や働き方など、改善できる点と時期を検討します。同時に、現在の自社の環境を評価する候補層も考えます。満たせない条件は明確にし、入社後に提供できる環境を正確に伝えることが大切です。
著者:砂川大輔
砂川大輔事務所 代表。内閣府プロフェッショナル人材活用ガイドブック3度掲載。富士通・アマゾンジャパンの正社員として経営戦略やマーケティングに従事。経験を活かし200社超の中小企業の事業に伴走。建設業・製造業の引き合いが多く、採用計画から制作・情報発信・担当者育成まで支援する。1級土木施工管理技士補、甲種危険物取扱者、甲種火薬類取扱保安責任者、第一種衛生管理者、PRプランナー、内部監査士など、建設・製造業の採用に関する資格を保有。

