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採用コラム

求人広告を増やす前に 採用のカスタマージャーニーと、入社に近い段階からの改善策

求人広告を出しているのに、採用につながらない。掲載を更新するべきか、採用サイトを直すべきか、判断できない。

このようなときは、求職者が自社を知ってから入社するまでの道筋を確かめてみましょう。応募後の連絡が滞っていたり、内定後も仕事内容や給与への不安が残っていたりすると、新たに集めた応募者にも同じことが起こり得ます。

採用の改善は、入社に近い段階から遡って考えるのが基本です。 入社まで進みやすい状態を整えることで、その後に使う広告費や情報発信の費用対効果が高まります。

この記事では、建設業・製造業の中小企業に向けて、採用のカスタマージャーニーを5段階で整理し、各段階の指標と改善策を解説します。

1.採用のカスタマージャーニーとは

採用のカスタマージャーニーとは、求職者が会社や求人を知り、応募・選考を経て、入社するまでに辿る道筋です。行動に加えて、その時々の期待や不安、会社との接点も整理します。参考:Indeed「What Is the Candidate Journey?」

本記事では、この道筋を次の5段階で考えます。

知る → 調べる・比較する → 応募する → 面接で確かめる → 入社を決める・入社する

それぞれの段階で確認する件数と、改善を見る指標を分けると、次のようになります。

フェーズその段階で把握する件数改善を見る指標・反応
知る求人表示数・クリック数接点の増減
調べる・比較する求人詳細・採用ページの閲覧数、応募開始数閲覧から応募開始へ進む割合
応募する応募開始数・応募完了数応募完了率
面接で確かめる面接実施人数、面接後の継続希望・辞退人数選考継続の意向、残る不安、辞退理由
入社を決める・入社する内定人数・承諾人数・入社人数内定承諾率、承諾後の入社率

求職者は、面接後に採用ページを読み返したり、他社と比較し直したりすることもあります。5段階は、改善箇所を考えるための整理です。

求人媒体内で応募が完結する場合もあるため、全員が自社サイトを通るとは限りません。自社が使っている経路ごとに、確認できる数字から見ていきましょう。

2.改善は、入社に近いフェーズから始める

求職者が進む順番に対して、会社が改善を点検する基本の順番は逆です。

内定・入社 → 面接 → 応募手続き → 求人内容 → 認知

例えば、内定を出しても辞退が続いているなら、その理由を確かめる必要があります。提示条件が分かりにくいのか、仕事への不安が残っているのか、希望する働き方と合っていないのか。理由によって、必要な対応は変わります。

ここを整えれば、すでに接点を持てた人との採用機会を活かせます。面接や内定時に出た質問を求人票へ反映すれば、これから応募を検討する人にも、必要な情報を先に届けられます。

費用との関係を、仮の数字で見てみましょう。

説明用の仮定改善前改善後
広告費30万円30万円
同じ採用要件で内定を出した人数10人10人
内定承諾人数6人8人
入社人数2人5人
入社1人あたりの広告費15万円6万円

広告費と内定人数が同じでも、入社まで進む割合によって、入社1人を確保するための広告費は変わります。

入社へ進む道筋を整えてから接点を増やすと、後々の費用対効果が良くなります。

応募が全くない場合は、応募後の対応を準備しながら、認知を広げる活動も並行します。また、応募フォームが動かないなど、明らかな障害は速やかに直しましょう。

当事務所のこだわり|限られた時間と予算の分配

中小企業の支援では、課題の優先順位を整理し、限られた資源をどこに使うかを重視してきました。採用でも、採りたい職種と期限、採用担当者の稼働時間を確認します。入社に近いところから点検し、必要な工数と期待値を考慮し、着手することを決めます。

3.内定・入社:「この会社に移ってよい」と判断できる材料をそろえる

内定を出した後は、求職者が転職後の生活を具体的に判断できるようにします。確認する数字は、内定人数・承諾人数・入社人数です。

  • 内定承諾率=内定承諾人数 ÷ 内定人数 × 100
  • 承諾後の入社率=入社人数 ÷ 内定承諾人数 × 100

まず、給与、勤務時間、休日、担当業務、勤務地を整理し、面接で説明した内容と提示条件が一致しているかを確認します。

製造業なら、「日勤で働ける」と伝えるだけでは、夜勤手当がなくなる収入不安に答えられません。基本給、各種手当、賞与の前提を示し、本人が望む収入と生活時間に照らして説明する必要があります。変動する収入や将来の見込みは、確定した金額と分けて伝えましょう。

建設業で「施工管理の負担を減らせる」と伝えるなら、担当現場数、施工エリア、書類作成の分担まで具体化します。繁忙期にどう変わるかも、判断に必要な情報です。

条件を説明したら、次の準備を進めます。

  • 残っている質問に、現場責任者など適切な人が答える。
  • 退職の引き継ぎも踏まえ、入社日を相談する。
  • 初日の流れ、教育担当、連絡窓口を伝える。
  • 回答期限や連絡の頻度を、本人の事情も踏まえて調整する。

条件が希望に合っていない場合には、提示内容の改善や採用ターゲットの見直しも必要です。説明を補えば解決する問題なのか、働く条件そのものの問題なのかを確かめましょう。

4.面接:仕事内容を理解し、選考を続けたいと思えるかを確かめる

採りたい人も、複数の就職先を比較しています。面接では、会社側が技能や経験を確認すると同時に、求職者も「この会社で働くと何が変わるか」を確かめています。

ここでは、面接実施人数に加え、面接後の選考継続の意向と、その理由を確認します。

現職の悩みを、仕事の場面まで掘り下げる

「残業を減らしたい」と聞いたら、どの仕事が、いつ集中し、なぜ減らせないのかを尋ねます。現場の移動なのか、書類作成なのか、欠員の補充なのかによって、自社が応えられる内容は違います。

あわせて、転職しても維持したい条件を聞きましょう。収入、通勤時間、身につけた技能を活かせる仕事など、本人が失いたくないものもあります。

そのうえで、自社で任せる仕事、分担、教育の進め方を説明します。現場担当者との会話や職場見学も、働く姿を具体的に考える材料になります。

面接後の意向と、残る疑問を確認する

面接の終わりや、その後の連絡で、例えば次のように尋ねます。

本日の説明を踏まえて、引き続き当社への入社を検討したいとお考えですか。判断するために、まだ確かめたいことはありますか。

本記事では、この確認を数値で振り返るために、次の指標を提案します。

面接後の選考継続希望率=継続希望人数 ÷ 継続・辞退の意思を確認できた人数 × 100

保留や意向未確認は別に記録し、面接実施人数と確認できた人数も添えます。これは求職者の意向を捉えるための指標です。会社側の合否判断や、その後に実際に選考が続いたかとは分けて扱います。

数字とともに、「給与の説明が分からなかった」「任される仕事をもう少し知りたい」といった反応を確認すると、補う情報が具体的になります。理由が分からないときは、推測で埋めず、未確認として残しましょう。

当事務所のこだわり|数字の背景にある、求職者の言葉を確かめる

IT企業では、企業への聞き取りとデータ分析を通じて、事業の課題を探ってきました。採用でも、応募や面接の数値に、応募者から受けた質問や確認できた辞退理由を重ねます。説明のどこが分かりにくく、何の不安が残ったかを、次の改善へつなげたいと考えています。

5.応募手続き:応募したい気持ちを、手間と不安で止めない

求人に関心を持っても、入力や書類の準備で止まってしまうことがあります。この段階では、応募開始数と応募完了数を確認します。

応募完了率=応募完了数 ÷ 応募開始数 × 100

Indeedでも、応募開始と応募完了は区別されています。「応募開始」がどの操作を指すかは、利用する媒体や計測方法に合わせて確認してください。参考:Indeed アナリティクスの「求人とキャンペーン」

まず、自社の求人をスマートフォンで開き、応募から送信まで試してみましょう。

  • 入力しづらい項目や、分かりにくいエラーはないか。
  • 初回から求めている書類や情報は、すべて必要か。
  • 応募後の流れや、連絡方法・目安が分かるか。
  • 送信後に、受付が完了したことを確認できるか。

在職中の人が応募することを考えると、連絡しやすい時間帯や希望する方法を確認することも大切です。

応募後から面接までの連絡も整える

応募を受け取った後は、返信の目安を決め、面接の日程候補、所要時間、場所、選考の流れを伝えます。

この移行部分で使うのが、「面接実施人数 ÷ 面接に案内した人数」という参加率です。面接前の辞退や日程調整での行き違いを点検するために使います。

面接に来てもらえたかと、面接を受けて選考を続けたいと思えたかは、分けて確認しましょう。それぞれ、改善する仕事が異なります。

6.求人内容:現職の悩みと、自社で実現できる変化をつなぐ

求人詳細や採用ページが読まれているのに応募が始まらない場合は、ターゲット、条件、選ぶ理由、説明の根拠を見直します。

この段階では、閲覧数と応募開始数を確認します。求人媒体で「応募開始数 ÷ 求人詳細のクリック数」を見られる場合は、その変化も参考になります。

採用したい人を、現在の仕事から具体化する

採用ターゲットを考えるときは、必要な資格や経験に加えて、現在どのような会社で、何の仕事を担い、何に悩んでいる人なのかを文章にしてみましょう。

その人が現職で解消できていない問題と、自社で変えられることを対応させます。次の表は、その考え方を示す例です。

ターゲットの悩みの仮説求人票・採用ページで伝える情報
施工管理で、現場終了後に書類作業が集中する書類作成の分担、担当範囲、実際の1日の流れ
製造で、収入を確保しながら私生活の時間を増やしたい給与の内訳、勤務形態、残業・夜勤の実態
加工で、担当できる技能を広げたい学べる作業、指導者、教育時間、担当変更や評価の条件

同じ業種でも、会社や職種によって働き方は違います。社員の前職や入社理由、応募者からの質問を聞き、仮説を確かめることが大切です。

差別化の根拠を、働く人にとっての変化で示す

「働きやすい」「成長できる」という言葉だけでは、求職者は他社との違いを判断しにくくなります。仕事内容や職場の説明が似通っていれば、給与や休日など、比較しやすい条件に判断が寄りやすくなります。

教育を強みにするなら、誰が、どの作業を、どの時間に教えるのか。負担の軽減を伝えるなら、どの業務を分担し、本人の仕事がどう変わるのか。自社の特徴を、求職者が転職によって得られる変化として説明しましょう。

実態として希望に応えられない点があれば、職場の改善や別のターゲットとの適合を検討します。まだ実施していない施策は、現在の強みとして掲載しないようにします。

職種別の考え方は、建設業の採用支援先の選び方と、製造業の採用支援先の選び方でも解説しています。

当事務所のこだわり|伝える内容と、実際の働き方をそろえる

EC企業では、商品レビューに書かれた不具合を確認し、部品の変更と保証情報の説明に取り組みました。採用でも、「教育が充実」「働きやすい」と伝えるなら、誰が何を教え、仕事をどう分担しているかを確かめます。説明を補う点と、職場の実態を改善する点を整理します。

7.認知:入社までの道筋を整え、合う人との接点を増やす

認知の段階では、求人表示数やクリック数を見て、接点の量を把握します。クリック率は、表示された情報から詳しい内容へ関心が向いたかを確認する補助指標です。

まずは職種名、仕事内容、勤務地、勤務条件が、採用したい人に伝わる表記になっているかを確かめます。求人一覧やSNS投稿の冒頭にも、対象者が関心を持つ情報を置きましょう。

掲載先は、ターゲットがどこで仕事の情報を集めるかに合わせて選びます。求人媒体、社員からの紹介、自社サイト、SNSなど、それぞれの接点から募集内容へ進めるようにします。広告と、開いた先のページで条件や説明が食い違っていないかも確認してください。

広告を続けるか、求人内容を直すか

ここまでの点検を踏まえると、判断は次のように整理できます。

現在の状態優先して確認・改善すること
面接後や内定後の辞退が続いている本人の希望と条件の適合、仕事内容の説明、残る不安
求人は読まれるが応募が始まらないターゲット、条件、選ぶ理由、その裏づけ
応募を始めても完了しない入力項目、書類、操作、応募後の案内
入社まで進む例があり、対応にも余力があるが、接点が足りない掲載先、発信内容、広告予算

広告を増やす場合も、予算上限と確認時期を決め、必要な人材との接点や選考結果まで追いましょう。クリックや応募が増えても、採用要件に合う人へ届いているかは別に確認する必要があります。

求人の点検項目は、求人を出しても応募が来ないときの見直し方も参考にしてください。

8.まず1職種で、入社側から点検する

すべての募集を一度に直そうとすると、作業が広がり、変化もつかみにくくなります。まずは優先する職種を一つ決め、次の順に進めましょう。

  1. 採用したい職種と、必要な技能・条件を整理する。
  2. 求人、広告費、応募・面接・内定・承諾・入社の記録を集める。
  3. 入社に近い順に、止まっている箇所と残る不安を確認する。
  4. 改善内容、担当者、作業時間・費用、確認日を決める。
  5. 変更後の件数と割合、求職者の反応を振り返る。

数字は、同じ職種・経路・応募時期の人を追って確認します。今月応募した人と今月入社した人は、同じ集団とは限りません。不採用、辞退、選考中、入社待ちも分けて記録してください。

件数が少ないときは「承諾率50%」に加えて「内定2人のうち承諾1人」と示すと、状況を把握しやすくなります。表示・クリックなどの回数と、応募者の人数も区別しましょう。

作業の分担に迷う場合は、採用担当者がいない中小企業の採用の進め方で、社内と外部の役割を整理できます。

よくある質問

応募がゼロでも、入社に近いところから直すのですか?

返信、面接での説明、条件提示の準備を点検しながら、認知・応募の接点づくりを並行します。応募がない段階では選考後の数字を取れないため、想定する求職者の疑問に答えられるか、現時点で確認できることから整えましょう。

通過率は何%を目指せばよいですか?

地域、職種、雇用形態ごとの相場と比較します。著しく劣っていれば、自社に原因があると推測できます。

内定辞退が多ければ、給与を上げるべきですか?

まず、確認できる辞退理由と提示条件を照らします。給与の改善が必要な場合も、仕事内容や教育への不安が残っている場合もあります。原因を一律に決めず、条件の改善と説明の充実のどちらが必要か、両方が必要かを検討しましょう。

採用の計画・求人内容・情報発信を、一緒に整える

砂川大輔事務所では、建設業・製造業の中小企業に向けて、採用計画、求人票・採用サイトの制作改善、情報発信、担当者育成を支援しています。

現在の求人と、把握できる応募・選考の状況をもとに、誰に何を伝え、どこから改善するかを整理します。数字がすべてそろっていなくても、分かる範囲から取り組めます。

支援内容・料金プラン・サービス説明資料をご覧ください。受付再開の通知を希望される方は、再開通知フォームをご利用いただけます。


著者:砂川大輔

砂川大輔事務所 代表。内閣府プロフェッショナル人材活用ガイドブック3度掲載。富士通・アマゾンジャパンの正社員として経営戦略やマーケティングに従事。経験を活かし200社超の中小企業の事業に伴走。建設業・製造業の引き合いが多く、採用計画から制作・情報発信・担当者育成まで支援する。1級土木施工管理技士補、甲種危険物取扱者、甲種火薬類取扱保安責任者、第一種衛生管理者、PRプランナー、内部監査士など、建設・製造業の採用に関する資格を保有。

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